古賀文敏ウイメンズクリニックKOGA FUMITOSHI WOMEN’S CLINIC

医師のご紹介

最近ネットや雑誌で見かけるようになった「胎児ドッグ」が気になっているのですが、出産予定の病院では胎児ドッグは行っていないと言われました。

結婚5年目で過去に流産経験もあり、今回は初めて心拍確認までできた妊娠です。せっかく妊娠できたのに毎日不安な気持ちで過ごしているので、胎児ドッグを受けたら少しは安心できるのかなと思います。だけど、何か異常があれば妊婦検診で指摘されるかなと思うので、何も指摘されずただ不安だというだけの私が、胎児ドッグを受けてもいいものでしょうか。胎児ドッグについて疑問に思うこと、色々と教えていただけますか?


質問者

妊婦検診でも毎回エコー検査がありますが、妊婦検診のエコー検査は胎児ドッグのエコー検査とは違うのですか?

先生

例えば、僕たちが胃腸科に行ってエコーで見てもらうときに「胃がありますね」とは言われないでしょう?胃に何か不調をおこしている原因がないかを見るのがエコー検査の役割なわけです。胎児についても同じことが言えるんだけど、一般の妊婦検診のエコー検査では羊水があるかや胎児が生きているかを確認したり、頭の大きさなんかを測ることが中心で、胎児の異常について詳細に診ているわけではないんですよね。

質問者

胎児ドッグのエコー検査ではどのようなことを見るのですか?赤ちゃんのことは心配ですが、胎児ドッグを受けるのは、なんだか特別で贅沢なことのようが気がします。

先生

胎児ドッグのエコー検査では、30分から1時間かけて胎児に染色体異常の心配が本当にあるのかどうかや形態異常がないかを確認します。本来ならば、胎児ドッグがエコー検査の役割だと思っています。

欧米で妊娠中のエコー検査は3回くらいしかないけど、毎回時間をかけて専門家が診ることになっています。イギリスでは保険適応で妊娠期間中に胎児ドッグを行います。日本ではまだ一般に普及していませんが、欧米ではすでに胎児ドッグは普通に行われていることなので、特別なことでも贅沢なことでもないですよ。

質問者

妊婦検診で胎児ドッグのように詳しく見てもらうことはできないのでしょうか?

先生

きちんとトレーニングを積んだ人間が専門の機械を使わないと胎児ドッグはできないんです。そして、胎児の異常が分かるような検査をする時には、「どのような検査をするのか、もし異常が見つかればそれを伝えるのか」ということに対して、事前に妊婦さんから同意をとって行わないといけません。全ての産科医に妊婦検診のエコー検査で毎回それを求めることは現状できないと思います。そして日本では胎児は保険適応外なので、検査費用は全額自己負担となります。経済的な理由でも、全ての妊婦さんに妊婦検診で行うということは難しいのが現状です。

質問者

初期の胎児ドッグと中期の胎児ドッグがありますが、検査を受ける時期以外に何か違いがありますか?

先生

初期ドッグに引っかかった人が中期ドッグを受けるものだと勘違いされている方が時々いますが、初期ドッグと中期ドッグでは、検査の目的がけっこう違います。

大まかに言うと、初期は染色体異常の心配があるかを判断するのに適した検査で、中期は胎児の形態異常を診断するのに適した検査です。

質問者

胎児の染色体異常が心配なら、中期ドッグではなく初期ドッグを受けるほうがいいということですか?

先生

そうです。例えば、染色体異常の胎児に起こりやすい首のむくみの厚さを、初期胎児ドッグの11週0日から13週6日までに計測するのは、その時期が染色体異常の判断をするのに一番適した時期とされているからです。そのため、この時期に世界中で行われたあらゆる検査データが集まっています。そのデータと照らし合わせることで、正確な判定が可能となるわけです。

質問者

中期ドッグでわかる胎児の形態異常とはどのようなものですか?

先生

赤ちゃんの先天異常が全体の5%あるとしたら染色体異常はその1/4で、残りのほとんどは心疾患や口唇口蓋裂や脊椎の異常(神経管閉鎖不全)などの病気です。このような病気を形態異常といいます。形態異常があるかどうかの診断をするのに適している時期が、妊娠18週0日から21週6日で、中期胎児ドッグでは、この時期に約30項目におよぶ胎児の形態を検査します。

質問者

中期ドッグで胎児の形態異常が見つかった時は、どうしたらいいのでしょうか?

先生

妊婦さんとご家族の気持ちに寄り添いながら、必要な情報を提供しますし、高次医療機関等と連携して、赤ちゃんにとって最善の選択ができるようにサポートします。

もしも中期ドッグで胎児に心疾患が見つかっても、妊娠中から専門医療機関と提携して出産を迎えることができれば、出産後の胎児の生存率はぐんと上がります。今の日本でも、例えば、先天性心疾患の赤ちゃんの出生前診断率は10%以下といわれています。生まれてから元気がない、肌の色が悪いなどの症状があって専門病院でみてもらうと心疾患が見つけるというケースが圧倒的に多いんですよ。

だから、もしも胎児診断で異常が見つかっても、知らずに出産するより知って出産に臨むほうがずっといいと思います。