古賀文敏ウイメンズクリニックKOGA FUMITOSHI WOMEN’S CLINIC

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院長コラム

院長 古賀文敏 が不定期に書いているコラムです

2007.10.03

すれ違う男女

「先生に今日!と言われたのに、夫は夜遅く帰ってきていつの間にか寝てしまっている」「どうしても夫は、自然妊娠にこだわって、ステップアップに反対と・・・」私は子供が欲しいと悩む女性の診察にいつも男性の影を想います。誤解を避けずにいうならば、そもそも男女は同じ気持ちになれません。あくまで進化心理学という学問の分野での話しですが・・・。

女性の卵巣の中の卵は、母親の体内にいるときに最高700万個で、生まれたときから減少の一途、思春期にはすでに20万個になっています。そして1ヶ月かけて排卵にいたる卵はわずか1個に対して、男性は思春期から毎日精子を作り出し、一日約1億匹であるから1ヶ月でなんと30億匹。同じように遺伝情報を引き継いでいるとはいえ、精子1匹に対して卵は30億倍の価値があるのです。

また男性の精子はいくつになっても受精できるのに対して、女性は妊娠できる時期が限られているのは紛れもない事実。昔から女性は自分の体を大事にしなさい、男はしっかり選びなさいというのはやはり真実なのです。男性は30億の価値の卵を常に狙い、女性は自らの卵に見合うだけの価値ある精子を見極めている。セックスの決定権は、常に女性にあるというのが、進化心理学では真実となっており、これは石器時代から変わらず、今でも男女の脳は昔のままです。(これをサバンナ原則といいます)。

そう、男女の脳は違うのです。結婚してある年齢になると、女性は妊娠のことが急に気になり、妊娠できる時間を逆算するようになります。対して男性は、いくつになってもそのことにピンと来ず、まだまだ自然にと思ってしまいます。加えてその頃、男性は働き盛りで、家に帰るとクタクタ、時には仕事上の付き合いからヘベレケの酩酊状態。そんな時、タイミングと言い出す気まずさとその後のお互いの気持ちのすれ違いは容易に想像できます。

でもやはり女性の方は、自分の本当の気持ちを大切にして欲しいと思います。自然にこだわる男性に対して、自然では妊娠しにくくなりつつあることの不安をうちあけて欲しいと思っています。男女の違いを乗り越えるのは、対話であり、相互理解なのです。そして相互理解の一助になれるのが、こういったクリニックだと思います。私の前でつらい思いを打ち明けられた、その涙を見たご主人はきっとあなたの手をそっと握りしめることでしょう。

わかってくれないと初めからあきらめずに、そもそも違うところからスタートと自覚した上で、いっぱい話してみてください。そしてお二人で受診してみてください。そこからは、私たちが頑張る番です。