古賀文敏ウイメンズクリニックKOGA FUMITOSHI WOMEN’S CLINIC

卵子凍結(社会的適応)

卵子凍結(社会的適応)とは

卵子凍結とは、将来の妊娠・体外受精に備えて、若いうちに自身の質の良い卵子を採取し、凍結保存しておくことです。凍結保存することで、若いときの生殖能力を保ったまま長期間の保存が可能になります。

卵子のもととなる「原始卵胞」は女性が生まれたばかりの赤ちゃんの時から卵巣の中にあり、女性本人の年齢と同じように歳を重ねます。卵子は加齢の影響を非常に受けやすく、また、妊娠に関わる様々な要素のうち卵子の質が、妊娠能力に大きく関係しています。卵子凍結とは、年齢を重ねても女性が出産できる可能性を高めるためのひとつの手段とも言えます。

卵子凍結における妊娠率

卵子凍結によって保存した卵子を使って妊娠・出産するためには、卵子と精子とを身体の外で受精させる顕微授精が必須となっています。

卵子は凍結しているので、融解(溶かす)する必要があります。融解の過程で5~20%の割合で卵子が破損してしまうこともあります。また、融解後、精子と受精すると受精卵(胚)になりますが、その受精卵が良好胚であるとは限りません。良好胚が子宮に着床してはじめて「妊娠」となります。

これらを踏まえ、卵子凍結での妊娠率を見てみましょう。

◆凍結卵子を融解した時の卵子生存の確率
 ・融解後の卵子生存の確率・・・80〜95%
 ・その後、精子を注入した場合の受精率・・・60〜80%

◆未受精卵融解後に、卵子が生存、受精し、質が良好な受精卵が確保できた場合に、卵子10個あたりで妊娠できる確率
 こちらは、採卵時の年齢により割合が異なります。

・30歳以下・・・80%程度
・31〜34歳・・・75%程度
・35〜37歳・・・53%程度
・38〜40歳・・・30%程度
・41歳以上・・・20%以下

卵子の生存率とその後の着床率を考えると、なるべく若い年齢で卵子凍結を行い、10個以上~できれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが望ましいということがわかります。

卵子凍結の流れ

排卵誘発を開始してから、採卵までの期間を採卵周期といいます。生理開始数日以内にご来院ください。

ステップ1:まずは事前検査にお越しください
ステップ2:月経開始1~3日以内でご来院いただき、「排卵誘発」を開始します
ステップ3/4:月経開始から8~10日目ごろにご来院いただき、ホルモン検査・超音波検査を実施します。結果に応じて再度診察を必要とする場合がありますが、概ねこの頃に採卵日を決定します。
ステップ5:月経開始から12~14日目ごろが採卵の時期となります。

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採卵当日は、以下のような流れとなります。

1. まず排卵の有無を超音波検査で確認します。排卵してしまっている場合(約5%)や、卵子の成長が止まってしまった場合(約2%)は中止になります。
2. 当院の採卵は、痛みがないように静脈麻酔を使用して採卵を行います。所要時間は約10分です。
3.手術後、安静室で2時間程度お休みいただきます。

帰宅後は、自宅で安静にお過ごしください。
当日は、お車の運転をお控えください。

卵子凍結の保管方法について

年齢に制限はありませんが、少しでも若い時点の卵子を凍結することで妊娠率が上昇します。また、妊娠・出産に関するリスクは母体年齢とともに上昇するので、凍結卵子を使用する際には担当医と相談しましょう。

保管方法については、①当院で卵子を保管する方法、②卵子凍結保管サービス「Grace Bank」を利用する方法をお選びいただけます。

①当院で卵子を保管
 当院院内で卵子をお預かりします。転居等ありましたら、卵子移送も可能です。

②卵子凍結保管サービス「Grace Bank」を利用

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 当院で採卵を行い、Grace Bankへ卵子を移送します。保管・凍結延長のお手続はGrace Bankと行っていただきます。
 Grace Bankの利用は事前に会員登録が必要です。こちらから登録をお願いします。

卵子凍結のリスク・副作用

◆排卵誘発剤による副作用
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といい、腹痛や腹部の膨満感の症状があげられます。当院では、過度な誘発は行わないため、卵巣の腫れや出血といった副作用の症状はあまり起こりません。ですが、排卵誘発剤の効果には個人差があるため、卵巣が腫れてしまう方もまれにいらっしゃいます。その場合は、数日間の自宅安静が必要となります。入院を要するような重度の副作用が発生するケースは全体の1%以下です。

◆採卵による副作用
下腹部の痛みや、出血などの症状が出る場合があります。採卵は基本的には安全な手技ですが、経腟超音波ガイド下にて卵巣を穿刺するため、極めてまれに腸や膀胱などの臓器損傷を起こす可能性が報告されています。また、卵巣表面からの出血、卵巣内での感染が起こる可能性がありますが、全体の0.3%程度です。このような場合には、数日間の安静入院が必要となる場合があります。

卵子凍結に係る費用

卵子凍結の費用は初診時の検査後、(A)セット料金価格、(B)受診日ごとの診療費支払いのどちらかをお選びいただけます。
40歳以上の方・AMHの値が1以下の方は、(B)をお勧めしております。


◆料金(税抜)
◎初診時診療費【超音波検査・AMH・栄養採血等】‥約2万円
◎術前検査【感染症・術前採血検査】‥約1万円

*(A)・(B)共通、初診時にお支払いいただく費用です

(A)セット料金‥ 35万円/回(*凍結個数:最大30個まで)
・誘発開始日にお支払いいただく金額‥15万円
・採卵日にお支払いいただく金額‥20万円

(B)受診日ごとの診療費支払い(*検査内容・使用薬剤・単位によって費用が異なります)
・卵子凍結説明‥1000円
・自己注射練習‥1500円
・治療開始時の月経時受診【超音波検査・ホルモン検査・排卵誘発剤(7日分)】‥  7万3,000円程度
・排卵誘発中の受診【超音波検査・ホルモン検査・排卵誘発剤(追加分)】‥ 3〜5万円
・採卵時【麻酔・薬剤・超音波検査含む】‥ 20万円(採卵卵子5個以下の方は減額あり)
・凍結時【凍結容器1本につき、成熟した卵子3個を凍結】‥ 1本目:2万円/本、2本目以降:1万円/本

*凍結卵子を使用した顕微授精を実施する場合は、以下の料金がかかります
・【顕微授精・培養・胚移植料金含む】‥ 30〜40万円/回

卵子凍結のよくあるご質問

Q: 卵子凍結をするために何回くらい通院が必要ですか?
 事前検査、排卵誘発、ホルモン検査と超音波検査、採卵の、最短4回のご来院となります。
 くわしくは「卵子凍結の流れ」をご覧ください。

Q:凍結した卵子はどこで使用できますか?
 当院での融解・受精を推奨しておりますが、提携クリニックのご紹介も可能です。ご相談ください。

Q:卵子をいくつ凍結しておく必要がありますか?
 10個以上~できれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが望ましいですが、ご不安・ご質問などまずはお気軽にご相談ください。

Q:現在のパートナーとの妊娠を将来的に考えている場合は?
 現在のパートナーとのお子様を将来ご希望の方は、卵子凍結ではなく受精卵凍結の方が妊娠の可能性が高くなります。一度当院へご相談ください。