古賀文敏ウイメンズクリニックKOGA FUMITOSHI WOMEN’S CLINIC

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院長コラム

院長 古賀文敏 が不定期に書いているコラムです

2017.12.07

Let me eat your pancreas.

皆さんにとって大事な11月初めを私のプレゼンのためにお休みさせて頂き、申し訳ありませんでした。無事にシンポジウムでの発表を終えてきました。
 コテコテの筑後人にとって、米国生殖医学会でのシンポジウムで日本代表としてプレゼンする重圧は、正直想像以上でした。実際の内容を詰め始めたのが、8月末で、その頃はスカイプのBIZMATEでのレッスンも十分時間が取れず、とにかくHuman Reproductionを60本ぐらい読んで、世界との違いを認識しながら、日本の胚凍結についてまとめました。日本ではARTで生まれてくる赤ちゃんの約8割は凍結法によるものですが、アメリカでは約3割、ヨーロッパでは、未だに新鮮胚移植より凍結融解胚移植の妊娠率が低い状況です。凍結することで、着床条件を変えることができ、妊娠率は上昇します。また胚移植時のエストロゲンが高くなると、胎盤発育の異常も増えるため、新鮮胚移植を避けることで妊娠中の合併症を減らすこともできます。そして新鮮胚移植の赤ちゃんは、自然妊娠の赤ちゃんより、少し小さめで、逆に凍結融解胚移植で生まれた赤ちゃんは少し大きい。大きいことも問題ですが、この小さいことも将来成人病や心疾患になる可能性を高めます。日本では低出生体重児の割合が増えていて、先進国のなかで極めてまれです。これは疫学的調査から母体が低栄養になると赤ちゃんが小さくなることが分かっているからです。これは日本の成人女性が痩せすぎて、しかも妊娠中摂取カロリーが少ないことと関連がありそうです。「小さく生んで、大きく育てる」は、決して褒められることではないのです。このあたりをお話しました。
 アメリカ留学が長かった広島ハートの向田先生から現地ホテルで、言い回しなどの指導を受け、プレゼン前の2日間はほとんど缶詰状態、でも夜は、みんなと美味しいアボガドディップやアヒージョを美味しいビールやワインで飲んでいましたから、このあたりは受験生とは違いますね。プレゼン内容も全て暗記してしまい、逆に日本での講演ではこんなにスラスラ言えないなあと思った次第です。アメリカ人だけではなく、インド人や中東から質問を受けましたが、まあ想定内でしたので、なんとか乗り越えられました。翌日は、ゆっくりと他の講演を聞いて回ることができ、世界で初めてPGSを行ったイギリス人Handysideや同時にシンポジウムを行ったアメリカNYUのGriffoらとお話できて、非常に充実した国際学会になりました。彼らに「You look like George Clooney.」と話しかけると、まんざらでもなく、握手してくれることにも気がつきました。私にとっては、スマートでグレイヘアの白人はみんなジョージクルーニー似なのですが。(笑)
 帰りの飛行機の中では、映画を4本も見ました。普段はなかなか手を出さないだろう「君の膵臓を食べたい」英語名「Let me eat your pancreas.」のタイトルに惹かれてつい見てしまいました。(私のプレゼン、最初に“Let me tell you a story”で始めていて、このLetの使い方が通ぽいかなあと思っていたため)ある程度は想像したストーリーでしたが、最後の予想外の展開に涙が止まらず、真っ暗でみんな寝静まった機内の中、声がもれるのではないかと心配しました。高校生カップルの秘密の1泊旅行が福岡で、百道のヒルトンシーホークに泊まっていました。最後に叶えたい3つのことの一つが好きな人とお泊まりすること。でも結果は、どうだったのでしょうか?あの頃は本当一大事ですよね。同じ傘に入る距離感に相当ドキドキしますよね。私も中学の時、大濠公園を一緒に歩いたことを恥ずかしながら思い出しました。ヒロインのように、クラスで人気者で快活なんだけど、自分にだけ特別なことを明かしてくれる状況に昔からキュンときていました。支えてやりたいけど、力になれないもどかしさ、悲しさ。若い女性の大きな病気の展開にはいつもやられてしまいます。あの頃はもっと近くに寄って抱き寄せることができたら支えになれるかもと思っていましたが、そう簡単ではないですよね。カラダを重ねてもわかり合えないことがある。逆にカラダを重ねなくても、一緒になっていないからこそもっと相手を想うこともできる。
 松本人志さんがワイドショーで「仕事に飽きた時」というテーマで、「仕事に飽きたところからどう楽しむかが本当のプロなのかもしれない。・・・同じように、セックスレスになってからでしょう、本当の夫婦は。」とのコメントされています。深いですね。
 婦人科の癌治療の患者さんを沢山受け持っていた時、助けられない状況にうちひしがれることもありましたが、今この世界で、可憐な女性の手助けを行うことができて、幸せだなあとしみじみ思いました。
 また明日から頑張ります。