古賀文敏ウイメンズクリニックKOGA FUMITOSHI WOMEN’S CLINIC

医師のご紹介

2015年に日本産科婦人科学会は、「男女が1年間、避妊せずに性生活を続けても妊娠しない」ケースを不妊症と定義する案をまとめました。今まで2年以上だったものを欧米と同じように1年以上と定義し、早めの不妊治療を勧めています。

妊娠するためには、どのような性生活を続ければよいのでしょう?妊娠しやすいタイミングの取り方を、古賀文敏先生にお聞きします。

2015.08.01


質問者

基礎体温が一番低い日を排卵日とみなしてタイミングを取っていますが、排卵日は基礎体温が一番低い日ということで間違いないですか?

先生

一般の方が思っているほど、体温没落日(基礎体温が一番低い日)に排卵することは多くありません。むしろ、低温最終日に排卵されている方が一番多いとされています。つまり体温が上昇した時の1日前です。基礎体温表つけても、「あっ、昨日が排卵日だった!」という感じです。

質問者

基礎体温表だけで排卵日を確実に知ることは難しそうですね。排卵日を知るためには他にどのような方法がありますか?

先生

ご自身で判断されるのでしたら、基礎体温表とあわせて頸管粘液の分泌量を観察したり、排卵検査薬を使用することでより排卵日を特定しやすくなります。大事なのは、頸管粘液最大の日→(翌日)排卵検査薬陽性、少し下腹部痛→(翌日)排卵→(翌日)基礎体温上昇という流れです。つまり、おりものが増えてきた時と排卵日はかなり時期がずれています。また排卵痛といって、排卵に伴う痛みは多くは排卵以前に自覚されるといわれています。当クリニックでは、超音波検査により卵胞を定期的に観察して、排卵の有無と時期を正確に特定していきます。

質問者

排卵日がわかれば、その日にタイミングを取るのが良いですか?

先生

実は、排卵日のタイミングは確率があまり高くありません!多くの研究から、排卵2日前、1日前に妊娠率が高くて、排卵日にはすでに確率が低下していることがわかっています。つまりおりものが多い時、排卵検査薬が陽性になった時ですね。精子に比べて卵子の生存期間は短いので、排卵した時にすでに精子が待機していることが大切です。そしてその精子の遡上のためには頸管粘液の多い時期が良いということになります。

質問者

排卵日の1日か2日前にタイミングを取れば良いのですか?

先生

よくネットや雑誌には、排卵周辺で1日おきにタイミングを取るのが良いと書いてありますが、実は毎日の方が妊娠率は高くなります。できる、できないはともかく、排卵前から3日間連続して夫婦生活をもつことが鉄板です。ただし恋愛と一緒で、どちらかが追いすぎると片方は逃げたくなる、このあたりをうまく考えて下さい。

質問者

毎日タイミングをとると、精子が薄くなって妊娠しづらいと聞くのですが大丈夫でしょうか?

先生

正常精子症例では毎日射精しても精子数及び運動率は正常範囲であるとされています。乏精子症においては、むしろ毎日射精することで良好になるという報告もあります。ですから、排卵日の前から3日間連続して夫婦生活をもったほうが、精子の状態を気にして回数を減らすよりも妊娠しやすいといえます。

質問者

教えていただいた方法をどれくらい続けると妊娠できるのでしょうか?また、どれくらい続けても妊娠しなければステップアップしたほうがよいのでしょうか?

先生

ご夫婦ともに不妊症の原因がない場合、ヒトの月経周期あたりの妊娠率は20~25%とされています。これは他の動物と比べて大変低い確率です。きちんと排卵日を特定し、効果的にタイミングをとれば、半年ほどで妊娠できる方が多いようです。でも子宮内膜症がひどかったり、卵巣予備能が低下していたり、ご主人の精液所見が悪かったり、色々な不妊症の原因があって妊娠されない方も多くいらっしゃいます。今回の不妊症の定義が1年以上と短くなったように、早めに検査した方が安心かもしれません。当院では、最初の診察を大事にします。その方の卵巣予備能がどれぐらいあるのか、今までの治療経過よりステップアップしたら、どれぐらいの確率で妊娠が望めるのかを予測した上で、ご主人との関係や精神的なゆとりについてお話を伺います。治療の進み具合は、人それぞれで結構です。一般にAMH(抗ミュラー管ホルモン)が低いと妊娠率が低下しますので、すぐに体外受精などのステップアップを勧められますが、その方の年齢や治療歴、受け入れ度を判断して、納得して治療を進めていくことが大事ですね。昨年は、AMHが0.01ng/ml以下なのに卵巣調節刺激とタイミングだけで2人妊娠されました。このような嬉しい驚きもたくさんあります。