古賀文敏ウイメンズクリニックKOGA FUMITOSHI WOMEN’S CLINIC

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院長コラム

院長 古賀文敏 が不定期に書いているコラムです

2007.06.01

6月の子猫

梅雨時期に軒下で生まれたばかりの子猫が寒そうに鳴いている光景、今ではあまり目にすることはないかもしれませんが、小さい頃かわいそうと思って拾って帰ったことはありませんか?雨空と鳴いている子猫、なんだかキュンときますね。どうしてこの組み合わせなんでしょう。ネコは、ご存知のように通常、春先にのみ発情します。雌は性行為の後、必ず排卵し高確率で妊娠、2ヵ月後の梅雨の時期に・・・という具合です。(ネコは性行為によって排卵が誘発されます。)

ではひとではどうでしょう。福岡の中洲は、1年を通してにぎわい、週末のラブホもしかりのはずなのに、聞こえてくるのは少子高齢化、出生率の危機的状況、そしてついに産婦人科医がいなくなる・・・最後は余談かもしれませんが(笑)。

20歳台の妊娠に関して何の問題もないカップルがちょうどいい頃に性行為を行った場合、どれほどの確率で妊娠するでしょうか?結果は驚くことに約25%程といわれていますが、何も使わなくても避妊率は75%ということになります。びっくりする数字ですよね。一般に妊娠期間と妊娠率は、逆相関するといわれています。さきのネコが妊娠期間2ヶ月、チンパンジーは妊娠期間7ヶ月で妊娠率70%、ひとは妊娠期間10ヶ月で妊娠率25%。ひとの場合は、頭が大きくなったために早く生まれざるを得なかったといわれていますので、妊娠率から想定すると本来妊娠期間は2年近いのかもしれません。そう、ひとは本来妊娠しにくい動物なんです。

ではなぜ妊娠率は低いのでしょうか?それは、受精卵、胚の自然淘汰(natural selection)です。精子の染色体異常は10%、卵子の染色体異常25%、受精での異常8%、卵割での異常25%、そして妊娠初期の染色体異常による流産10%・・・といろんな段階で染色体異常がおこり、結果的に受精卵の70%は染色体異常によって出産までいたりません。逆に生まれてこれた赤ちゃんで染色体異常が有る場合は、程度が軽い方なんです。

親にとってみれば、小さな異常もとてつもなく大きく、どうして自分の子供だけという思いにかられがちですが、実際は上記の自然淘汰をくぐりぬけた貴重児で、逆に生命力が強いとも言えます。こういった事実を知ると心が軽くなりますよね。不妊治療の情報も知ることで心が安らぐものでなくては、と思っています。詳しくはセミナーで。セミナー開催  9月8日(土)14:30開始